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団員私物楽器紹介のコーナー その11

学生のころに、先輩から誕生日プレゼントとしていただいたんですよ。ティンホイッスル。

楽器が好きです、民族楽器を集めています、なんて言いますと、ありがたいことに「じゃああげるよ」とお声を頂戴することがございます。

ただ演奏できるかどうかは別問題でして、例えば別の方にいただいたケーナなんかはまず何度も音を出せていない。

せっかくの貰い物ですし、ゲーム音楽にも使えそうなので、どうにか慣れたいものですが。

 

そこいきますと、ティンホイッスルは比較的付き合いの楽な楽器です。

リコーダーのような唄口が付いているから、咥えて息を吹き込めば良い。

機構としても前方に6つの穴が空いたきりで、全部押さえればレ、一番下を空ければミ、順々に空けてファ#、ソ、ラ、シと上がっていき、どの穴も空いていればド#と、Dのメジャースケールが簡単に出る(移調楽器なので音自体は個体による)。

じゃあオクターブ上はどうするんだというと、同じ運指で強く吹くと高くなる。

もちろん細かい話をいえば決して簡単ではないのですが、音を鳴らす分には大変とっつきやすい楽器です。

 

そしてお値段も安い。概ね1500円前後。

ネットで探せば1000円を切ることもある。

誕生日にいただいたものの値段を調べるのは少々マナーに欠けるが、しょうがないのです。島村楽器に常に置いてあるんだもの。

 

第3回の定期演奏会では『パルテナの鏡』で使われました。

この楽器はアイルランドに起源がある(※)とされていますが、その地域の音楽性からか大変素朴な音色をしており、ゲーム音楽はもちろんドラマやアニメの劇伴でもよく用いられています。

 

※:現在のブリキや真鍮製のものにフォーカスすると、19世紀に初めて工場生産が行われ「ティンホイッスル」という名称の定着に繋がったイギリスを発祥とした方が良いかもしれません。ただそれ以前にも同機構の楽器が存在しますし、またその時のアイルランドはイギリス支配下にあったためあんまりカッチリと言い切るのも面倒が生じます。

 

日本で最も普及に貢献したのはやはり1997年の映画『タイタニック』の主題歌でしょう。

ワイドショーでも取り上げられましたから、この時代にちょっとした芸術的趣味を求めていた方には買った向きも多いでしょうし、これを買う人は大抵宗次郎ブームでオカリナも買っているし、女子十二楽坊ブームで二胡も買っています。

私の実家がそうだから。

最後に帰省した時にはオタマトーンもありました。

 

話を戻しましてパルテナでは、トランペットのサニーゴがティンホイッスル奏者として活躍しました。

SNSでの反響もありましたから、壇上での立ち姿にシビれたお客様は少なからずいらっしゃったことでしょう。

 

ちょっとエピソードがありまして、彼は本番リハの時に大遅刻をしました。

現れたのはちょうどパルテナの合わせをやっているさなか。イントロのタイミングで、ティンホイッスルを携えつつ客席方向から駆け込んできました。

その颯爽とした登壇たるや、却ってそれ自体が演出のようであったのですが、あの、シモテの目立つ位置に立って吹くというのはもしかしてこの時に決まったんでしょうかね。

 

ともかく彼は超絶音感の持ち主で、譜面も大して見ていないし運指も知らない状態であれをこなしたスーパープレイヤーでして、皆さまの印象にも残るソリストっぷりだったのではないかと思います。

ちなみに彼は『天誅』でタンバリンも叩いていました。活躍が多い。

 

(あまやん/打楽器)